Monday, 23 November 2015

Obscure


夏の終わりの強い日差しが傾いて
道の上に家々の影を落としてゆく
妹とぼくはチョークをもって
黒い家の影に沿って白墨の線を引いていく

三角屋根の家が道の上で横たわる
ぼくたちは影でできた家の上にいくつもの窓を描き
扉と、家をとりまく柵まで描いた

妹がお気に入りのお隣のねこの画を描いていると
となりの家から現れた猫がぼくらの家に入り込む

すっかり満足して、ぼくたちは影の家のうえに寝転んだ
ぼくは三角屋根のところに、妹は右から三つ目の窓の上に

木漏れ日がぼくらの家に光の滴を落としている
ぼくはすっかりこのひんやりした居心地のいい家が気に入った
明日はこの家に友達を呼ぼう

汗を拭きながら犬を連れてぼくたちの家の中を散歩している

ふとったおばさん

La Phalene (The Moth), 1895, Cornelius Ary Renan. French (1858 - 1900) - Lithograph -


Interior of a mountain lodge, 1830-1832, George Catlin. (1796 - 1872)


Wednesday, 18 November 2015

Two Women, 1961, Charles Blackman. Australian, born in 1928


- Across The Great Divide - Nancy Griffith with Emmylou Harris




こんな夢を見た (月の曳航 ・Tsuki no eikou)


ロープの端を三日月にしっかりと結わえ付けて
小さなボートで夜の海をただようわたしは
釣り糸を海に投げこむ

三日月とボートをつないだロープはまっすぐに空へむかって伸びているが、ひょっとすると月は手を伸ばせば触れられるかとも見える
水面で身じろぐ釣り糸は、波の小さな手に引かれてやはりまっすぐに海の中へ伸びている

月に引かれているのだろうか 海に引かれているのだろか

浜辺でわたしの青い犬が月に向かっておーんと吠えると
月は次第に満ちてゆき、つないだロープがはらりと落ちる

青い犬がしきりにほえるので
わたしはロープと釣り糸を引き上げ

四いろの巻貝をつなぎ合わせて作った「艪」を漕いで
子供たちが作ったのでも、潮風がつくったのでもなさそうな白い砂のピラミッドがたち並ぶ浜へ還っていった

夜の空にはサソリと、天秤をささげた娘と
三角形の紙を逆さに2枚重ねたような星たちが浮かんでいた

巻貝たちは波の下でなにを聴いているのかしらん?

Tuesday, 17 November 2015

こんな夢を見た (石の花 ・ Ishi no hana )


いつからだろう
そんな夢をよく見るようになったのは?
夢の中で、わたしははだかで大地に横たわっている
まるで氷面のような灰色の大地
わたしを取り囲むように幾本もの黒いひまわりが大地から生い茂っている
それらの黒い顔たちは一様にうつむいて、そばに横たわっているわたしの存在すら気に留めていないように
うつうつと下を向いている
黒い葉もてんでに茎の途中で垂れ下がり、そこに生命が宿っているのかすらさだかでないほどに
無力に気怠げに風にゆられている
全身消炭色のひまわりたちは、それでも次第に数を増しているようだ
どこまでもつづく荒涼とした大地に消炭色の唖者のひまわりたちが増殖してゆくのはあたりまえだろう

一枚の、巨大な象にでも押しつぶされたようなシャツが空をよこぎってゆく、あれは、わたしのものだったろう
両方の袖を翼のようにひろげて、ギクシャクと空を舞っている

大地と同じ色をした天空からアルファベットの形をした雪片が舞い落ちてくる

灰色の大地に横たわり、消炭色のひまわりと、落下するアルファベットの雪片と、どこまでも広がる灰色の空の真下で
わたしは不思議な安息につつまれていた
そこにあるのは永遠の静寂

・・・破壊とは、おそらく、醜悪なるものを作り出すことだ